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音楽教育研究報告 第32号
問題発見・解決能力を高める音楽鑑賞の授業デザイン ~PBLの学習過程を活用した鑑賞授業モデルの検討 (2022年11月発行)
本書は、公益財団法人音楽鑑賞振興財団主催「2019年度 第52回 音楽鑑賞教育振興 論文・作文募集 研究助成の部」に入選された齊藤貴文氏(北海道教育大学附属釧路義務教育学校後期課程教諭)による、2020年度から2021年度の2年間にわたる研究の報告書です。
従来の鑑賞領域の学習活動にPBLの要素を取り入れることによって、音楽科が目指す資質・能力と、学習の基盤となる資質・能力である「問題発見・解決能力」を効果的に高めることを目指すものです。
研究の柱となる「PBLの学習過程」「ドライビング・クエスチョン」が何かを明らかにし、その考え方や手法を鑑賞の学習活動に取り入れることによって「深い学び」が実現できると仮定し、実践を通してその学習効果について検証しています。
《PBLとは》
「Problem-based learning(問題解決学習や問題基盤型学習と訳される)」と「Project-based learning(プロジェクト学習やプロジェクト型学習と訳される)」の2つの学習方法。これらは学習の目的や目指すところに違いがありますが、本研究では「問題発見・解決能力」の資質・能力を培うにあたっては大きな方向性は同じものと解釈し、音楽科における問題解決的な学習を新たに構築するために2つのPBLの考え方を活用しています。
《ドライビング・クエスチョンとは》
真正が高く、実社会に即した問題や問い、課題に対して学習者が心から「やってみたい」「できるようになってみたい」「わかりたい」と心を駆り立てられるような発問のこと。鑑賞授業の中で適宜タイミングよく投げかけることによって、子どもたち一人ひとりが、より主体性が維持され、活動を貫くことができると考え、この手法・考え方を本研究の要となる手立てとしています。
目次
刊行にあたって
はじめに
第1章 研究テーマ設定の趣旨と研究の概要
1. 研究の動機と目的
2. PBLについて
3. 研究の概要
(1)PBLの学習過程
(2)ドライビング・クエスチョン(Driving Question)
(3)鑑賞学習におけるPBL型の学習活動
第2章 研究の方法
1. PBLの手法を取り入れた鑑賞領域における授業デザインの検討
(1)教材および指導計画の検討
(2)資質・能力の検討
(3)効果的な課題や問題解決の場面の設定
(4)情報活用能力育成の視点の検討
(5)ドライビング・クエスチョンの検討
第3章 授業開発・実践と検証
1. 実践例の見方
2. 実践例
Vltava ~Smetanaの残したSoundscape
3. 検証
(1)2020年度(1年次)
① スクール・サーベイ(長期)(2020年12月実施)
② Google Forms(短期・中期・長期)
(2)2021年度(2年次)
① スクール・サーベイ(長期)(2021年12月実施)
② Google Forms(短期・中期・長期)
(3)テキストマイニング
(4)鑑賞に特化したアンケート
4.実践例集
① SOUND TRUCKを分析しよう ~イメージと音楽のかかわり
② Asian Musicの特徴を捉えよう ~アジアの諸民族の音楽の特徴を感じ取ってその魅力を味わおう
③ Schubertがしかけた怖さの秘密を分析しよう ~曲想と音楽の構造との関わりを理解して、その魅力を味わおう
③ 民謡ってなんだろう ~北海道の民謡の特徴を捉えよう
⑤ ROKUDAN 〜悠久の音楽を味わおう
⑥ GAGAKU ~1000年前の音楽に触れよう
⑦ Bachがしかけた主題の秘密 ~フーガの特徴を捉えよう
⑧ Beethovenがしかけた動機の秘密 ~構成から音楽を捉えよう
⑨ 総合芸術の魅力 ~Kabuki
⑩ Ravelがしかけた音楽の工夫 ~絶賛される反復の妙
⑪ Noh ~世界に誇る日本文化の価値を探ろう
⑫ Popular Music ~流行の秘密を捉えよう
5.生徒の声
おわりに
謝辞
参考文献